TORNADO

Architecture, Art, Design

佐賀県立美術館がリニューアル。それを記念して「吉岡徳仁展ートルネード」が開催されている。吉岡徳仁は佐賀県出身の世界的なデザイナー。倉俣史郎や三宅一生の元でデザインを学んだ後独立。これまでに手がけた作品はニューヨーク現代美術館、ポンピドゥ・センター、ヴィクトリア・アンド・アルバートミュージアムなどの世界の主要な美術館の永久コレクションとして所蔵されてる。

と言いつつ、デザインに興味がある人にとっては、とっても有名な人なのだが、そうでもない人にとっては「何をやった人?」だと思う。確かに、普通に生活していて吉岡さんのデザインに触れる事ってあまりないからね。身近なもので、しいてあげるならば、auの携帯電話のデザインや化粧品のFANCLのロゴやパッケージのデザインがあるかなー。詳しくはホームページもあるので、こちらを見ていただくとして、今回の展示会で僕が一番テンションが上がったのは「会場が写真撮影可」なこと。日本で開催される展示会のほとんどが撮影不可。誰もがスマホで写真を気軽に取って情報を共有するようになったこの時代に、写真撮影出来ないのってかなりのストレスを感じる。無料の展示会だからなのか?まぁ、理由はともあれ、今回に限らず続けて欲しいと思いましたよ佐賀県立美術館様。来場者に情報拡散して貰った方が動員増えると思うしねー。

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ハニカム構造の紙でつくられた椅子「ハニーポップ|2001」。紙で出来ているので人が座るとお尻の形に変形します。それは、座った人の形状を椅子が記憶するということ。家具の素材としての紙の柔らかさはネガティブな要素ではなく、オリジナルを生み出すポジティブな要素として利用されている。

そうそう、会場全体はこのストローで埋め尽くされた「トルネード」になっていて、そのストローの渦のなかにつくられた小路に導かれるように作品を鑑賞していくという。

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奥にあるのは「ウォーターブロック|2002」。ガラスの塊でできたベンチ。水の塊の様に見え、時間の止まった感覚があり、波紋のようなファサードには風を感じる。

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水槽のなかで成長する結晶によって形成される「ヴィーナス|2008」。実用的な椅子と言うよりも、自然が生み出す偶発の美を追求したアート作品。

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展示の最後は、吉岡さんのこれまでの仕事がプロジェクターで映し出されるスペースが用意されていた。使用されているスツールは、Kartell社の「SPARKLE|2008」。

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美術館のリニューアルの監修も吉岡さんがされていて、綺麗な打ち放しコンクリートのミニマルな空間に生まれ変わっている。

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均等に割り付けられた目地やピーコンの穴。精度の高いコンクリート打ち放しの仕上げは、建築的というよりはプロダクト的な印象が強い。

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ミニマルなトイレのサイン。やっぱり女性はスカートなんですね。

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通路にストローはみ出ていますよー(笑)。

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リニューアルにあたり、新設された「OKADA-ROOM」。郷土の画家である岡田三郎助の常設展示室。美術館では1983年の開館以来、三郎助の作品の収集や研究を精力的に行ってきたそうで、質、量ともに国内を代表するコレクションになっているとのこと。年に数回の展示替えを行い、同時期に活躍した黒田清輝や藤島武二などの近代日本の洋画家の作品と合わせて企画展示が行われていくようです。自分にとってはまさに、近代日本の画家ブームが来ているので嬉しいスペース(笑)。しかも、写真撮影可。こちらも是非続けてほしい。

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博物館に繋がる通路。硝子越しに屋外展示の彫刻が並ぶ。外は小雨が降っていたのだが、彫刻は濡れた状態で鑑賞するのが一番いいように思う。室内に居ながら見れるのはちょっとした贅沢かもしれない。

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博物館の中庭から見た美術館。彫刻作品がガラス越しに入れ子状に見えてとても綺麗。

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隣の博物館は1970年に建てられた。設計は第一工房の高橋靗一と内田祥哉。プレキャストコンクリートによる格子梁が建築全体をシステマティックに支配していて、あらかじめコンクリートでつくられた十字の梁を、ブロックを組み立てるように連結し建設された。建築をデザインと施工とに分けて考えるのではなく、一貫性をもつものと捉え、デザイン、生産、工法をシステム化することによって生まれる機能美を見ることができる。

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博物館の室内は、リニューアルされた方のコンクリート打ち放しとはうって変わって、はつりを入れた荒々しい仕上げ。階段の手摺りは、吊り橋でよく見かけるワイヤーのようだ。

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室内の天井にもプレキャストコンクリートのグリッドを見ることができる。機能として必要な構造体のグリッドが、建物全体のデザイン的統一を見事に果たしていて心地よい空間をつくりだしている。

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エントランスホールにある六角形を組み合わせたソファもシステマティック(笑)。

博物館を一通り見た後は、敷地内にある「清恵庵(1970年)」へ。

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この茶室、堀口捨己が手がけた最後の作品。しかし、建物を見るとどれくらい関わっていたのかな?と思える所も見受けられる。アルミサッシが使われているところがあったり、控えの間の床には合板のフローリングが張られていたり。。。時を経て、勝手に手が加えられてオリジナルでは無くなったのかも知れない。定かではないが、丹下健三以前の日本を代表する建築家の作品を見られる機会はだんだん少なくなっている事を考えると、貴重な建築ではないかと思って、博物館へ来たときは必ず立ち寄る事にしている。

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美術館と博物館を一通り見終わり、次は同じ佐賀城公園内にある「市村記念体育館(1963年)」へ。設計は神奈川県立近代美術館などを手がけた坂倉準三。コルビジェに師事した3人の日本人のなかの一人だ。体育館はギザギザの壁とシェル構造の大屋根に特徴のある建物。佐賀美へ来たら、ここもセットで訪れる場所になっていて、今回は内部も見学することに。

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コンクリートの存在感。巨大な生き物の様で生命力を感じます。

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誰もいないロビー。年月が経つので手は入れられていると思うのだが、ほぼ当時のままで維持されているのがすごい。昭和の古き良きモダニズムの雰囲気を感じることができる貴重な建築空間。

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バックスペースも見学可能。楽屋は当時のままで、昭和の時代にタイムスリップしたような空間が維持されている。

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係の人に教えて貰った、シェル構造の湾曲を見ることが出来る場所。自慢げに教えて頂いたのだが、以外とわかりにくかった(笑)。

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体育館を見た後、同じ敷地にある「佐賀県立図書館(1963年)」へ。設計は博物館と同じ第一工房の高橋靗一と内田祥哉。こちらもプレキャストコンクリートが採用されていて、閲覧机・書架の配置からモジュールを導きだしたモデュラーコーディネーションによって設計されています。外観には当時のモダンデザインの潮流を見ることができ、当時としては、官公庁建築のお手本になる様な建物だったと思う。

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佐賀城内エリアは僕にとっては建築のテーマパーク。佐賀城跡や歴史館、60〜70年代のモダン建築、そして茶室。今回吉岡徳仁さんの展示会で久しぶりに訪れたが、いつもわくわくさせてくれる。特に60〜70年代のモダン建築は維持していくのが大変そうなんだけど、何時までもそのままの姿で残してもらいたいと切に願う。それはやがて佐賀で暮らす人たちの何ものにも代え難い財産となるはずだから。


吉岡徳仁展-トルネード

場所:佐賀県立美術館
住所:佐賀市城内1-15-23
会期:2015年 7月2日(木) − 8月2日(日)
開館:AM9:30 – PM18:00
料金:無料 *場内撮影可