境内美術館

Art

太宰府天満宮の境内でアートを体験できる「境内美術館」。境内の様々な場所に展示してある作品は、天満宮で毎年開催されている「太宰府天満宮アートプログラム」に招待された作家が残していったもの。いま展示してあるのは、コンセプチャルアートの旗手「ライアン・ダーガー(英国)」と、様々な媒体表現で知られる「サイモン・フジワラ」の2名の作家の作品。ガイドマップが用意されていて、それを頼りに広い境内に展示された作品を見てまわることが出来ます。先ずは浮殿にあるライアン・ダーガーの作品から・・・。

keidaiart_1

keidaiart_2
本当にキラキラするけど何の意味もないもの|Really shiny stuff that doesn’t mean anything
artist : ライアン・ダーガー / Ryan Gander / 2011

中心にある磁石によって吸い寄せられた金属片の塊で出来た球体。「中心にある見えない力」を表現したこのオブジェは、天満宮の神様の存在(求心力)のメタファーとなっている。

keidaiart_14
天満宮本殿の方にある鳥居をくぐって、

keidaiart_3
遊園地のある東神苑へ。菖蒲池の廻りの梅の木の植え込みの一角に・・・作品があった!

keidaiart_4
すべてわかったⅥ|Everything is learned,Ⅵ
artist : ライアン・ダーガー / Ryan Gander / 2011

作品の表札がないとただの岩なので見過ごしてしまう作品。よく見ると岩の上部が摩耗しているのがわかる。その岩は、ロダンの「考える人」が、考えていたことがすべて分かって立ち去ったあとを表現したもの。それを聞いて再び岩を見てみると、岩の上に「考える人」の残像が現れやしないか? 残ったお尻の跡がキュート!

keidaiart_5
宝物殿の近くには2作品がある。

keidaiart_6
並行宇宙|Metaverse
artist : ライアン・ダーガー / Ryan Gander / 2010

「エジャートン男爵4世」の記念碑は残骸の状態ではあるが、極楽鳥の発見者という功績を現代へ伝えている。これ、ライアンによって遺構をフィクショナルに再現したインスタレーション。記念碑に実存の人物を設定し、更に壊すことで昔からそこにあった感を演出。新たに「極楽鳥の発見者」という架空の物語を盛ることで、つくられたオブジェが「有り難いもの」になっていく。このような、盲目的に信仰することの危うさを知らしめるような作品が、信仰の空間に置かれることは意義深い。

keidaiart_7
歴史について考える|The Problem of History
artist : サイモン・フジワラ / Simon Fujiwara / 2013

この椅子の近くには麒麟のブロンズ像がある。戦前は二体あったらしい。その無くなった一体は戦時中の金属供出で失われたという。そしてこの一見プラスチックのチープな、神社の空間には似つかわしくない椅子なのだが、サイモン・フジワラによるれっきとしたアート作品。しかもブロンズで作られている。失われた麒麟像が金属以外でつくられていたら現存していたのでは?という隠喩になっているのかなと思う。チープなプラスチック椅子をブロンズでつくること、それをアート作品と宣言することで、長く生き延びるものとして存在している。これが普通のプラスチック椅子だったらすでにここには無いはずである。

keidaiart_8
天満宮の裏に回ってみる。表の側の賑やかな喧噪とは反目して、静の空気が流れています。

keidaiart_9
それに呼応するかのように、道真に縁のある神様を祀る摂社がひっそりと建ち並ぶ。作品はそんな喧噪から逃れた緑の中に佇んでいます。

keidaiart_10
信仰について考える|The Problem of Faith
artist : サイモン・フジワラ / Simon Fujiwara / 2013

この作品はなんとも難しい。コンクリートで作ったフェイクの岩に、松葉杖が刺さっている。南仏の「ルルドの聖母」の洞窟には治癒した多くの人の松葉杖が供えられ、健康を思う気持ちが信仰へ繋がっているという。松葉杖を岩に突き刺す表現は少々過激だが、これは、南仏の洞窟のシチュエーションとイメージをだぶらせて信仰の場を再現している。もっと言えば、このフェイクを信じる人がいるならば、ここも同様に信仰の場となりうるだろう。

keidaiart_11
再び、賑やかな境内に戻り天神広場の方へ。境内美術館のラインナップにはないのですが、広場の脇にある絵馬堂にはマイケル・リンの絵馬が奉納されているので必見です。

keidaiart_12
その絵馬堂の横の心字池を囲う植え込みの中に作品があります。
太宰府天満宮幼稚園の園児との共同作業で製作された作品。先程の「信仰について考える」同様にフェイクの岩に、園児達の手形がスプレー缶によって象られている。

keidaiart_13
この空気のように|Like the air that we breath
artist : ライアン・ダーガー / Ryan Gander / 2011

丸太に刻まれている記号は、このオブジェの下に実際に埋められた75個の「大切なモノ」。埋められた「大切なモノ」は見ることが出来なくなってしまったが、返って目に見えないことの方が、それぞれの持ってた姿やエピソードを自由に想像できるようになる。この丸太は、実際に埋まっているモノよりも、想像力を換気させることこそ「大切なモノ」であることに気付かせてくれる。