The Pen

Art

「1日に10cm四方くらいしか進まないんですよ・・・」展示の最後に用意されたVTRから流れる作家のインタビュー。
大きな作品は、綿密に計算して作品に望むことはないという。最初に漠然としたモチーフがあり、後は筆が進がままに任せる。完成までに時間がかかるので、その間に起こった社会的事件や日々の生活の営みが、日記を書くように作品のなかに反映されていく。今回初公開の新作にして大作の「誕生」は完成までに3年の月日を費やしたそうだ。一見、周到に準備されたコンセプトに基づいて描かれている印象なのだが、細部を見てみると脈絡のないモチーフが諧謔的にちりばめられていて、それが作品に奥行きのあるストーリーを与え、いつのまにか作品の世界に引き込まれていく。

1mmに満たない無数の線によって表現される世界観に見る人は息をのむ。
訪れたのは平日だったが多くの人が会場に足を運んでいた。高齢の方が多い印象。大作の前では人だかりができており、郷土出身作家の緻密な描写に釘付けになっている。なかには受付で配られた虫眼鏡越しに凝視し絵の前を動こうとしない人もいて、そのまま絵の中の世界に吸い込まれていくかの様相を呈している。作品の前から動こうとしないそのおばあちゃんは、その虫眼鏡を通して死の先にある世界をのぞき込んでいるようでとても興味深かった。

そんな、ある種ほほえましい光景が散見できる展示会だった。


池田学展 The Pen 凝縮の宇宙

場所:佐賀県立美術館
住所:佐賀市城内1-15-23
会期:2017年 1月20日(金) − 3月20日(月)
開館:AM9:30 – PM18:00
休館:毎週月曜